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クリスマス市のグリューワイン

美女ヘレネ 八話

「ペトロ!」と、ヘレネは地下墓所につくなり彼に駆け寄った。パウロがそばにいたが、構いはしなかった。彼女はパウロを突き飛ばすようにしてペトロに抱きついた。彼は少々動揺して、「どうしたんだ、ヘレネ」と言った。
「ころされた、みんな、ころされたの!!」
「誰が殺されたって?」ペトロが不安そうな顔で言った。
「あのよにんのひとたち!ころされたの!あたしみたの!」
ヘレネはそれだけしか言えなかった。大声を上げて彼女は泣いた。地下墓所の壁に反響して、墓所全体が彼女達のために泣いているようだった。ペトロは彼女の言葉を受けて、ショックを受けたような表情で固まっていた。彼の眼から涙がこぼれる。ガクガクと彼の体が痙攣しだした。
「ペトロ」
口を開いたのはパウロだった。
「悲しむことはない。彼女達には殉教の栄冠が与えられたのだ」パウロもさすがに悲しげな顔ではあったが、ペトロよりもずっと落ち着いていた。
「彼女達は天に昇り、我らが主とともにある存在になったのだ。彼女達を祝福しようじゃないか。君は泣くのではなく、むしろ喜ぶべきなのではないのか。それこそが、君が普段教えていることだ。私もそれに関して、同意をしている」
「うるさい!」ペトロは返した。「おれが言っていることなんだぞ、おれが理解してないわけがないだろ!でも、先生ならこんなことにはならなかった!先生がいれば殺されなかった!なのにおれは!」
「ペトロ、神の本質とは奇術ではないと、君もいつも言っているじゃないか。それに我らが主、イエス・キリストの死はあくまで定められていたことで」
「分かってるよ!でもおれは自分が情けないんだ!」
ペトロがパウロの言葉を遮り、彼に掴み掛った。
「分かっていても、割り切れないんだよ!おれはただの人間だ、愚かな人間なんだよ!あの人のように人を救うことができない、おれのせいだ!何もかもおれが駄目なんだ!」
ペトロが喚き散らした。駄々をこねる子供のように、ヘレネの目には映った。パウロは少し困ったような顔をしたが、ペトロのするがままにさせておいた。
そのときふと、ヘレネの耳が異質な音をとらえた。何かが地下墓所にやってくる。人間の足音ではない。それなのに、まっすぐにこちらにやってくる。
「ペトロ、なにか、くる!」
ヘレネが叫んだ。次の瞬間、地下墓所の扉があいて、四匹の犬が猛然とペトロに飛びかかってきた。

「なんだ、こいつら!?」
ペトロはあわてて身をひるがえし「ヘレネ、下がってろ!」と叫んだ。ヘレネは言われたとおり、祈り台の陰に慌てて転がり込んだ。
ドタバタという音が聞こえる。何かがひっくり返ったようだった。犬がうなり声を上げる。ヘレネは不安に耐えきれず、祈り台の陰からそっと顔を出した。
犬は四匹ともペトロを狙っているようで、ペトロはかみつこうとする彼らに必死で抗っていた。ふと、パウロが何やら祈りの言葉を唱える。すると犬達はは先ほどまでの勢いを鎮めて、吠え声も小さくなった。
ほっとヘレネが安心した時に「何をしている、お前達」と言う声が聞こえた。その声とともに、犬達がまた激しく唸りだす。地下墓所に重い空気が立ち込めた。声は、ヘレネがよく知っている声った。開いた扉から姿を現したのは、シモンだった。

何故シモンがここに、とヘレネは動転した。彼自身は祈り台の陰から見ているヘレネには気づいていないらしかった。目の色を変えてペトロとパウロを威嚇し続ける犬に少し待つように彼は手振りで指示して、「探したぞ」と言い放った。
シモンは周りを見渡して「地下墓所とは考えたものだ。こんな陰気くさいところは実にお前達にお似合いだ。まさかこんなところに住みついているとも思わんから、探りも入れられんしな」と、毒々しい口調で言った。
「シモン、お前、皇帝の命令でおれを探してたのか?」
「そう言ったところだ」勝ち誇ったような笑みをシモンは投げかけた。「もっとも、ネロに命令されずともおれはいつかここに来たろうよ。お前を殺しに」
シモンがぱちりと指を鳴らした。とたんに、犬がゆっくりと動き始めた。「させん!」と動いたパウロを、シモンが取り押さえた。小柄なパウロはあっという間にシモンに押さえつけられた。
「貴様は黙っていろ、邪魔だ」と言ってシモンはパウロの脳天と胴体を素早く、数発力いっぱい殴りつけた。パウロは小さくうめき声をあげ、崩れ落ちる。とどめとばかりにシモンが彼の喉に一発くらわすと、パウロは失神してしまった。
四匹の犬もペトロに躍りかかった。彼がいくら何を言っても、シモンの魔術が強くなっているのか、一向に聞かない。犬達は次々にペトロにかみつき、彼は傷だらけになっていった。とうとう犬の一匹が隙をついてペトロに飛びかかり、彼の腕に深く噛みつく。「ペトロ」それを見てシモンが満足そうに笑った。ギラギラとシモンの目が輝いていた。
「死ね」
ヘレネは激しく動揺した。どうやれば犬が大人しくなるのか、必死で考えた。その時、ペトロが叫んだ。
「ヘレネ!祈り台のところのパンをこっちに投げてくれ、頼む!」
「ヘレネ!?」シモンが驚いて、ペトロから目を離した。彼の動揺に連動するように犬達も一瞬動きを止める。ヘレネは訳が分からなかったが、祈り台の上においてあったパンのうち一つをとって、そのあいた一瞬のうちに力いっぱいペトロのほうに放り投げた。ペトロは犬にかみつかれていないほうの手でそれを受け取ると、祈りの文句を早口で唱えた。ふと、その文句に呼応するようにパンが真珠のように白く輝きだす。彼はそれを四匹の犬に突きつけた。
ふと、犬が全員恐ろしいものを見たかのように委縮し、腰を抜かしてしまった。彼にかみついていた犬も口を離して、その場にへたり込む。「いい子だ、大人しくしていろ」と言うと、ペトロはパンを四つにちぎって犬達の口に強引に押し込んだ。するともう犬達からはあの狂ったような表情が消えて、全く普通の野良犬に戻った。
ペトロは一息つくと、犬にかまれた片腕を押さえつけた。かなりの血が出ていた。ヘレネは祈り台の裏から出てきて、ペトロに駆け寄る。「ヘレネ、なぜお前がここにいる?」と、シモンが言ったが、彼女はそれを無視した。
「ペトロ、大丈夫?」
「ああ、平気だ。心配はいらない。ありがとう」と、ペトロがヘレネの頭を撫でた。
ヘレネの目が涙ぐむ。ペトロは懐から布きれを取り出して、「泣かないでもいいさ。すぐ治る」と笑って彼女の涙を拭いた。
「ヘレネに触るな!」とシモンの怒鳴り声が聞こえて、ペトロの手がふり払われた。シモンは明らかに怒りに燃えていた。「貴様、よくもヘレネまで誑かしてくれたな!」
ペトロがそれに対して返答する前に、シモンはパウロにしたようにペトロを殴りつけていた。体力を消耗していた彼はすぐに地下墓所の床に倒れてしまう。シモンはペトロに馬乗りになると、もう一発殴りつけようと拳を振り上げた。ヘレネは反射的にそれをつかんだ。
「ヘレネ、何をする!」
ヘレネはまだ泣きじゃくったままで、ろくな言葉が言えなかった。「煩いぞ、どけ!」と、彼が代わりにヘレネを殴りつけようとした時、ふともう数人、地下墓所にやってきた。その気配を察知して、シモンも拳を引っ込める。現れたのは、数人の従者を引き連れた皇帝ネロだった。

「陰気くさい墓地だな。朕はこのような場は好かぬ」誰に言うでもなくそういった後、ネロはシモンに「シモン、お前は魔術でしか戦えん男と思っていたがなかなかどうして腕っぷしも大したものだ」と、細長い指で口を隠してまるで女のようにコロコロと笑った。
「離してやれ、シモン。朕はその男と話がしたい」
とシモンに言い、ネロはすたすたと地面にあおむけになって倒れているペトロの前まで来た。シモンも引き下がって、ついでにヘレネを抱き寄せるように自分のほうに引いた。彼が今までにないほど力を込めていたので、ヘレネも全く抵抗することができなかった。

ネロはペトロの顔を覗き込み「皇帝の前でそのような格好とは結構な身分だな、神の使徒とやら」と皮肉めいた口調で言い、ついて来ていたアグリッパに「この者を起き上がらせよ」と命じた。アグリッパはすたすたとペトロのほうに歩いていき、乱暴に立たせたついでに彼の首をひねって彼の顔を覗き込んだ。
「泥臭い田舎者の青二才じゃないか」アグリッパは嘲笑した。「さぞかし色男かと思いきや……何故この私がお前ごときに妾を奪われたのか分からんな。さぞや立派なのかい。まあ、そんなものに骨抜きになるあの妾達も相当な淫乱どもだったというわけだね」
ペトロは怒って抗議しようとしたが、その前にアグリッパに猿轡を噛まされてしまった。それでもペトロは黙ってアグリッパを怒りのこもった視線で睨みつける。
「さて、ペトロとやら」と、ネロが立ち上がった彼に向かって言った。「探したぞ。朕が貴様と話したがっていた理由は分かっておろう。貴様らの宗教は、ローマにはそぐわぬ。そしてそのようなものを、朕はローマ皇帝として一刻も早く排除せねばならぬ。それが国家君主としての使命よ」
ネロの声が厳かに地下墓所に反響する中、「なんで?」と言う高い声が一つ混ざった。ヘレネの声だった。ネロがヘレネに視線を向ける。シモンはあわてて「ヘレネ!」とたしなめたが、ネロは冷静な口調でこう続けた。
「何故だと?こやつらは神が唯一だとぬかしているからだ。ユピテル、ミネルヴァにマルスと、神が大勢いるのは当然の真理だ。そして皇帝である朕もまた神の一員だ。こやつらはそれを否定しておる。それ即ち、このローマの根底を揺るがしているということだ。ローマはマルス神の息子によって作られ、神たる皇帝の治める国だ。こやつらはそれを否定しておる。ローマの起源も存在も、すべて否定しておる。そんな者どもがこそこそと寄り集まり独自の組織を立てることを危惧せぬ君主がどこにおる。もしもこやつらが強大になり力を得てみよ、その時はローマの終わりということだ」
ネロは悠々と演説した。ネロの取り巻き達も深くうなずいた。だが、ヘレネは少し考えてからこういった。
「じゃあ、なんでシモンさまのことはゆるしているんですか?」
その言葉の後、一瞬の空白が開いた。ヘレネは続けた。
「それに、ペトロのせいでローマがおわるわけ、ないですよ。かみさまがかわっても、ぜんぶ、そのままです。だって、だれがなにをしんじても、ほんとうにこのよをつくったかみさまは、ずっとおなじで、だから、つくられたせかいも、ずっとおなじなんです」
ヘレネは不思議な感覚を感じていた。体の中に火が燃えているような気分だった。精神を高揚させるものではない。凍えそうな寒い夜にたき起こす火のような暖かさだった。火花がパチパチと心の中ではじけ、星のように煌めいている様子さえまぶたの裏に浮かんだ。自然と口角が上がり、ヘレネは静かに微笑んだ。
ネロは少し押し黙っていたが、ふっと笑って「どうやらお前には政治の話が分からぬらしい。国とは国土が海に沈まずとも滅び得るものなのだと分からぬうちは、朕の話も理解できなかろう」と、意外にも穏やかに語りかけた。
「話がそれたな、ペトロよ」と、ネロはペトロに再び向かい合って言った。「続けるが、貴様らの活動が社会問題にもなっておる。ことに貴様、若い娘達を誑かしているそうではないか。そこに居るアグリッパともども、何人もの男や若者が自分達の女を奪われたと嘆いておる。朕の気に入りのシモンの連れの娘にも手を出しておったのだな、驚きだぞ」ネロは横目でヘレネを見た。ヘレネはまた抗議しようとしたが、シモンが苛立ったように彼女の口をふさいだ。
「だが、朕は寛大だ。何よりも、マルスを否定し、皇帝を否定する、そこまでぬかすほどのお前達に興味がないといえば嘘になる。ありていに言えば、ただ処刑してしまうのは非常に口惜しい」急にネロは冷たい笑いを浮かべた。大理石の人形のような顔が、ますます作り物じみた美しさと不気味さを持った。
「賭けをせぬか。朕とて多少貴様らの事は学んでおる。なんでも貴様の師、ナザレのイエスは素晴らしい術を使ってユダヤの人民の心を集めたそうな。弟子のお前がそれをちらとも使えないということはなかろう。その力、朕に見せてみよ。このシモンと術比べをするのだ」
ピクリと反応するペトロを見届けてネロは続ける。
「いやとは言わせん。三日後の正午に宮廷の前の広場に来い。本当の神とやらの術、今一度朕に知らしめて見せよ。聞くに、貴様シモンの事をペテン師だと言っているそうな。しかしシモンができることを貴様ができぬ以上、むしろ口先だけのペテン師は貴様ではないのか?それでいて真実の神を語る資格等あるのか?仮に貴様らがそうでないと言うのならば、証明する方法は大衆の面前で奇跡を行うほかはないであろう。来ぬなら来ぬで勝手にせよ、我々は貴様らをただの口先だけの詐欺師どもとみなすのみだ。だがしかし、もし本物の神の力とやらを見せるのであれば、少しは貴様らの話も聞いてやらんでもない」
ネロはそこまで言い切ると、「では、待っておるぞ」と言葉を締めくくり、さっと踵を返して帰ろうとした。唐突だったので、あわてて従者が後に続く。アグリッパはペトロの扱いに戸惑いどうするべきかネロに声をかけたが、彼から離しておけと言われて地面に突き飛ばすように振りほどき、ついでに蹴りを入れてからネロに続いた。地面に転げたペトロは両手を地べたについて起き上がると、猿轡をほどいて大きく息を吸い込み、荒々しく吐き出した。息が苦しかったようだった。
ヘレネはペトロに駆け寄ろうとした。しかしシモンは怒った声で「おれ達も行くぞ」と彼女の手を引きずって地下墓所から出て行った。


その夜、シモンはヘレネを殴った。何発も殴った。ヘレネは黙ってそれを受けていた。シモンが自分にあたることにはもう慣れていた。
シモンと会う前にもよくあったことだった。ヘレネが娼婦だったころ、客の中には彼女に酷い当たり方をする者がいた。ヘレネを人間とは思わないように、殴り、罵り、犯した。ヘレネはそれにも文句ひとつ言わなかった。彼女は慣れ切っていた。ヘレネはただシモンの暴力に甘んじていた。シモンも黙っていた。彼はただ怒っているだけだった。一言も言葉を発さなかった。怒りが言葉に追いつかないので黙っているのだとヘレネは感じていた。
自分の体の中で何かが泣いていた。いたい、やめて、しんでしまう、と嘆いていた。ヘレネも同じ気持ちだった。ヘレネも心の中で、その嘆く声に合わせてそう呟いた。ヘレネは理解していた。このような状況で、何があっても誰もやめることはないのだ。自分にできるのは目の前の人間が満足するまで耐えることだけなのだ。
「所詮、娼婦か」と、ようやくシモンが言葉を見つけたと見えて、口に出した。
「おれの目を隠れて、よくも……よりによってあいつなんぞに惑わされたな。やはり売女だ、頭の足りていない淫乱女だ。男が現れれば誰であろうとふらふらついていくのだから」
シモンはヘレネを窓の外に突き飛ばした。彼女は庭に転げ落ちる。シモン自身も出てきて、彼女を青い薔薇の茂みに無理矢理うずめた。刺が彼女の顔や腕に突き刺さり、血が出た。
「今日はそこで寝ていろ、淫乱の売女にはお似合いだ」シモンは彼女にぴしゃりと言い放った。
ふと、彼女の口が開いた。
彼女が口を開いたのではない。彼女の口が勝手に開いたのだ。ヘレネにはそう思えた。全く自分の意志の範疇ではなかった。
「いんらん、なのって、あなたたちじゃないの?」
背を向けたシモンがその言葉に振り返る。
「なんだって?」
「わたしたちがいつも、よるに、するやつ」ヘレネは淫乱という難しい言葉の定義をよく知らないはずだった。だがその時、直感的に彼女は理解していた。そして突き動かされるように口が動いた。「ペトロはきらいでした。あの4にんの、きれいなひとたちも、きらいでした。そしてあたしも、きらい。だっていたいんだもの。でもあなたはすき。だってまいにちやるんだもの。アグリッパもすき。したいから、あのひとたち、つれもどそうとしてたんだもの。なのになんで、あなたたちじゃなくて、わたしたちがそうよばれるんですか。いんらんなのは、あなたたちでしょ。じぶんがそうだからって、みんなが、そうじゃないのに、なんであたしたちをそうだときめつけて、ばかにするの」
ヘレネは普段の自分では信じられないほど、饒舌に喋った。何故言ってしまったのか、うまく説明がつかなかった。言えば言うほど相手は怒るだけなのに。本心を言えば、シモンをこれ以上怒らせないためにこんなことは言いたくなかったはずだ。
しかし、自分の口に憎しみはわいては来なかった。それどころかいくら彼に怒られようとも言わざるを得ないような気も同時にしていた。あまりに不条理だと思っていた。こちらに歩いてきたシモンの手が自分の喉に伸び、締め上げたのが分かってもヘレネは後悔していなかった。彼女は眉毛一つ動かさなかった。
シモンは薔薇の茂みにうずもれたヘレネの首を握りつぶすような勢いで締めた。非常に長い時間だった。二人とも何も発さないまま、月の光だけが二人を照らしていた。ヘレネの息が止まったが、シモンも息を殺していた。止めていたと言ってもいいのかもしれない。彼は呼吸を忘れて、自分の手の中でゆっくりと生気を失っていくヘレネを鬼気迫る目でじっと見つめていた。彼の観察を邪魔しないためか、風も吹かず木の葉もそよがなかった。犬の遠吠えも赤ん坊の夜泣きもなかった。ヘレネは苦悶の表情を一片も浮かべず、屠られる家畜の様な気分で彼の扼頸を受けた。
しかし、ヘレネがいよいよ死ぬかもしれないと思い始めたころ、彼はふっと我に返ったように慌てて手を放した。ヘレネは断続的に息を吸い込み、ちかちかする眼を何度も瞬かせた。 抜けかけていた自分の魂が一気に流れ込んでくるような気分だった。
「やりすぎた、悪かったな」
ヘレネには目を合わせずにそれだけ言って、シモンは一人で窓ではなく正面扉の方に向かっていった。ヘレネはそこに一人だけ取り残された。
「よかった、まだいきてる」
体の中の声がふと呟いた。ヘレネは「ええ」と返事をした。


翌日の早朝、シモンは寝ているヘレネを抱きかかえてベッドに寝かせた。そして、縄で彼女の手首を寝室の柱につないだ。そうして、ネロのもとに出かけた。


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